マンション大規模改修のコンサルタント

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なぜ、大規模改修にコンサル(設計事務所)が必要なのか.gif

Ⅰ.工事と切り離した第三者としての技術者の必要性

オフィスビルや賃貸マンションの様に、オーナーが1人(1社)で、信頼のおける施工業者と付き合いがあれば、施工業者に改修提案を依頼し、そのままそちらで見積→施工という流れで依頼されても問題無いかもしれません。
しかし分譲マンションの場合、区分所有者全員がオーナーであり、その中には様々な考え方、職業の方がいらっしゃいます。 大規模改修工事を行うお金も、修繕積立金として区分所有者全員で貯めてきたものです。
大規模改修工事の様な大きな金額の動く工事を決定する場合、「なぜその業者に依頼したのか?」「その業者は信頼できる会社で、実績はあるのか?」「適正な価格で契約したのか?」等、施主である全ての区分所有者からの質問に明確に回答する必要があります。
その為には、厳正なルールに則った入札を行って、業者を決定しなければなりません。
入札を行うに当たっては、

 ① 改修設計図
 ② 予算書・数量書
 ③ 改修工事特記仕様書
 ④ 現場説明書
 ⑤ 見積要項書

等が必要になります。
①は、建物のどこを、どの様に改修するのかを細かく指示した図面です。
②は、設計図に基づいてコンサルが各部の数量等を積算し、一般的な適正価格を入力して工事金額の予算を建てた物を予算書と言い、その金額部分を白紙にして、項目と数量だけにしたものを数量書といいます。
③は、図面に記入してある工事内容の、各項目毎に更に細かく仕様・手順を示したものです。
④は、工事の概要、入札の手順・スケジュール等を業者に説明する書類です。
⑤は、業者が見積をする際の、細かなルールを示した書類です。

これらの書類が無いまま、複数の施工業者に合見積りを依頼するケースが稀に見受けられますが、これでは各社毎に工事内容がバラバラになってしまい、金額を見ても何処が本当に安いのか分かりません。
何m走るのか、どこがゴールなのかも知らされずに、いきなり「よーいドン!」 と言われても、競争のしようが無いのです。

それらの図面や書類の作成の為に、調査・診断を行い、建物を守っていく為に、どこに、どのような改修を行う必要が有るのかを判断し、ご提案するのが我々コンサルタントの仕事です。
重要なのは、我々がコンサルタントであって、自ら施工を行わない、第三者であると言うことです。工事金額の高い・低いが自らの利益を左右する施工業者の立場では、本当に公正な立場での工事提案は出来ません。「この部分については今回は改修の必要は無い、長期的に考えて次回に廻した方が良い。」という様な発想は、自分の収益を減らしてまでは出来ないものです。

Ⅱ.工事監理者の必要性

工事管理とは、施工業者が行うもので、全体の工程計画・下請け業者の手配・安全管理などの事を言い、いわゆる現場監督:現場代理人の責任で行います。
これに対して工事監理とは、施工が設計図書通りにきちんと行われているか、施工業者の施工管理に問題はないか、第三者の立場で監視する仕事の事です。

施工業者も改修のプロであり、より良い品質で工事を行いたいのは当然の事です。しかし、彼らにとって工事金額の中からより多くの利益を会社に残すことも重要な仕事であり、非常に手間暇の掛かる施工方法、大幅な手直しの伴うチェック等はどうしても避けてしまいがちです。(これは会社の体質、現場代理人によってもかなり差があります。)そこで、工事費から得られる利益と関係の無い、第三者として品質を確保する技術者が必要なのです。

コンサルタント(設計事務所)の選び方.gif

業者は詳細な設計書を作って入札で選ぶ。では、コンサルタントはどうやって選べば良いのか?

コンサルタントを選定するに当たっては、一般的には金額のみでは無く、数社のヒアリングを行って、各社の仕事の進め方、何処まで資料を作成するのか(調査診断書・改修提案書・概算書・予算書・設計図等)、実績はどの位あるかをプレゼンさせて決定します。コンサルの場合は工事と違って、仕事の量、質が各社まちまちですので、このプレゼンを見て管理組合で充分に協議して判断する事になります。金額の安さだけで決めてしまう事だけは避けた方が得策です。

どんなコンサルタントが良いのか?

改修工事のコンサルタントには様々なスタイルがあります。

 ①新築も行う建築設計事務所が、改修工事の設計・監理も行っている
 ②改修工事のコンサルタント専門に新たに作られた会社
 ③改修施工業者が立ち上げたコンサルタント部門

等が主なところです。
それぞれに一長一短はありますが、③について、コンサルタントを受け持った物件の施工をも自社で受注しようとする場合は、監理者の第三者性が保てず、問題がある事は誰の目にも明らかです。

当社はもちろん、①に当たります。
大規模改修工事で改修を行う部分がたとえ屋上防水や外壁塗装のみであったとしても、鉄筋の爆裂や、コンクリートの打設不良等、それがどのような過程で発生するのかを知る為には、建物をゼロから造る経験を積んでいない者には分からない事が沢山あります。又、改修に加えて一部に屋根を架けたいとか、開放廊下にスクリーンを付けて塞ぎたい等、建築法規に係わる改造工事が出た場合、建築基準法や消防法、各種条例等の法規を熟知していなければ即座に対応が出来ませんし、場合によっては確認申請を出す必要も出てきます。
又ありがちなトラブルの例としては、「リフォームで換気扇を新設したい」「設備用配管を新設したい」等の理由で、コンクリートの壁に穴を開けなければならない場合、設計の経験がある者が居ない為に、「構造上重要な鉄筋を切ってしまった」という様な重大な事態に発展する例もあります。さらに怖いのは、誰かがそれを指摘しなければ、その後もそれに誰も気づかないままになると言うことです。

これらの様な理由で、改修工事の設計・監理は新築設計も行っている一級建築士がしなければならないと考えていますし、建築物を設計し、この世に生み出す者の責任でもあると考えています。
逆に新築設計のみを行い、改修設計は行わない設計事務所もあります。知人に頼まれた、新築の仕事が減った、等の理由でそういった事務所が突然調査・診断・改修設計等に手を出す事がありますが、改修には改修の専門知識と経験が必要ですから、良い仕事が出来るとも思えません。

(株)松澤建築設計事務所は、建物を生み出す設計事務所としての仕事を行いながら、約200棟の調査診断・大規模改修の設計・監理を行ってきました。この間に蓄積した、新築設計だけを続けていても絶対に得られなかった知識(建物の弱点、やってはいけない納まり、どんな部分にひび割れが生じるのか等)は、よりレベルの高い設計への糧となっています。そして新築の設計・現場監理を続けている事で、建物のどこにどのようなトラブルが生じるのかを深く理解し、調査・診断に活かす事ができるのです。

長い付き合いができそうか?

調査診断・改修設計を依頼したコンサルは、その建物の事を細部に渡るまで知る事になります。その様な貴重な技術者と、大規模改修が終わればサヨウナラでは非常にもったいないと言えます。大規模改修が終わっても、その後のメンテナンス・定期点検への立会・長期修繕の見直し・設備改修の計画等、気になることがあれば気軽に相談できる、建物の主治医として長くつきあっていけそうか?ヒアリングの際にはそういった視点で、人間性も含めて観察される事をお奨めします。

業務内容(改修).gif

1)建物調査、診断、改修基本計画

* 劣化度調査・診断
* 改修項目・改修時期検討
* 改修基本計画書作成
* 建物定期診断書作成
* 建物 長期修繕計画書作成
* 工事費概算書作成

2) 改修設計

* 設計図・特記仕様書等の設計図書作成
* 工事費予算書作成

3) 工事監理

* 入札用の現場説明書・見積要項書の作成
* 施工業者比較表(会社概要・入札金額等)作成
* 総会・工事説明会での住民説明
* 設計図書通りに施行が行われているかどうかのチェック・色彩管理・検査等

4) 耐震診断・改修設計

大規模改修と大規模修繕の違い.gif

大規模改修工事と大規模修繕工事。同じ意味で使われる事が多いこの2つの言葉ですが、厳密には若干意味が違うと考えています。

「大規模修繕工事」とは、

その名の通り修繕。単に新築時の状態に戻すことだけを目的とした工事を意味します。

「大規模改修工事」とは、

新築時に戻すのみで無く、
・より機能の高い、新しい仕上に更新する
・住民の高齢化に合わせて、共用部のバリアフリー化を図る
・駐輪場が足りないので2段式ラックを新設する
・屋根の無いゴミ置場に屋根を新設する
・エントランス廻りに無駄なスペース(オブジェ・滝等)が多いので、実用的なスペースに変更したい。
等、前の仕様を変更・グレードアップしたり、機能を上げる事も含めたリニューアル工事を意味します。

時代の変化や建材の進化、又新築時の設計思想と実際の住民との意識のずれ等、そう言ったグレードアップやリニューアルについては多かれ少なかれ要望が出てきます。結果的に「大規模修繕」に終わったとしても、「大規模改修」を念頭に置いて検討する事が重要です。

長期修繕計画書の重要性.gif

建物をきちんとメンテナンスしていく為には、それにどれだけのお金が必要なのかを把握する必要があります。25~30年程度の長いスパンで、いつ頃どんな改修が必要になり、どれくらいお金が掛かるのか?その計画をきちんと立てる事で、現在の修繕積立金の金額で足りるのか?今の内に値上げをしなければ後で大変な事になるのか?その現状を把握する事ができます。

修繕積立金が安いと喜んでいる区分所有者の方もいらっしゃいますが、その結果近い将来、
「必要なメンテナンスをするお金が無い」→「一時金を徴収するか?」→「そんなお金は出せない」
という最悪の流れになります。新築当時から住んでいる区分所有者はどんどん高齢化し、収入も少なくなってくる上に、メンテナンスの出来ていない、老朽化した古いマンションでは新しい住民も入ってこない。そうなると更に修繕積立金が集まらない。この様なスパイラルに陥り、ついにはスラム化していくことになりかねません。実際にスラム化してしまったマンションも存在します。

マンションは皆さんの大切な資産です。専有部だけ綺麗にリフォームしていても、こうなっては資産価値はありません。町を見渡せば、今でも新しいマンションがどんどん生まれています。それとは反対に人口はこの先減っていく一方です。現時点でも、住宅ストックが世帯数を上回っている状況ですから、この先住宅の数が余っていくのは間違いのない事です。その中で空き室だらけにならないよう、建物を美しく保ち、設備等も時代に合わせて陳腐化しないように、長期修繕計画を立てて計画修繕を行っていかなければならないのです。

大切なのは、定期的な見直し

一度作った長期修繕計画書を絶対の物として、その通りにやっていれば絶対に間違いは無い、と思いこむ事も危険な事です。
年月が経てば、建材の単価や労務費も変化しますし、新しい建材も次々に現れ、改修に使う材料も変わっていきます。又設備に関しても、リフォームに対応した製品が多数開発されており、材料の耐久性も上がって来ています。
そういった時代の変化に合わせ、現実に即した修繕計画を保つ為には、5年に1回程度、長期修繕計画書の見直しを行う必要があります。
特に新築時にデベロッパーが作成した物や、管理会社に依頼して安価に作成した長期修繕計画書は危険です。そういった計画書は、建物の延床面積や階数などの簡単なデータを入力すれば自動で作成されるソフトを使って作られている事が多く、非常に大雑把な、「目安の目安」程度にしかなりません。
大規模改修に当たって調査・診断・改修設計を依頼された場合、必ず各部の詳細な数量書が作成されますので、長期修繕計画書も同時に作成すれば、より細かい数字に基づいた、現実に近い計画書を作成する事が出来ます。

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直結増圧方式への変更.gif

直結増圧方式とは?

ここ数年に建てられた新しいマンションを除く殆どのマンションでは、上水道から引き込んだ水を一旦受水槽に貯めた上で、
①屋上に設置した高架水槽へ送ってから各戸へ給水する。
②受水槽から ポンプで直接各戸へ給水する。
のどちらかになっています。

福岡市では現在、こういった受水槽方式から、引き込んだ水をポンプで増圧し、直接各戸へ給水する「直結増圧方式」への切り替えを推奨しています。

メリット

  • 常にフレッシュな水を供給できる。
  • 受水槽等の維持管理費を削減出来る。
  • 受水槽の無くなったスペースを駐車場等に有効利用できる。
  • 受水槽への異物の混入、清掃の不徹底等の危険を無くす事が出来る。
  • ※特に受水槽が地下にある場合、豪雨・台風等による増水の際に汚水が槽内に混入する恐れがある為危険です。

デメリット

  • 災害時や水道本館工事等で断水した時はすぐに水が止まる。
  • 停電時、上階では水が出なくなる恐れがある。(水圧による)



■受水槽方式から直結増圧方式へ

高架水槽.gif矢印.gif直結増圧.gif




更新か?更正か?.gif

給排水管の改修をするに当たり、最初に選択を迫られるのがこの問題です。
更新とは管を全て新しいものに取り替える工事、更生とは、工法は様々ですが、既存の管の内部にエポキシ樹脂等のコーティングを施し、延命化を図る工事です。

更新に比べ、更生のメリットは、費用が安い・工期が短い・騒音が少ない等が上げられます。しかし、保証期間は長くても10年程で、いずれは更新工事を行う必要がある為、あくまでその場しのぎであるとも言えます。
更新工事は費用がかかり、工期も長く、騒音も伴いますが、樹脂製の配管材料を使う事で、今後の腐食の心配もなく、建物の寿命を迎えるまで大きな改修の必要はありません。

長いスパンで考えて更新を選択するか、現在の経済状況等を鑑みて更生を選択するか、管理組合でじっくりと納得行くまで協議する必要があります。

設備改修の実例.gif


株式会社 松澤建築設計事務所
〔連絡先〕
〒810-0075
福岡市中央区港2丁目2-11 2F
TEL :092-713-5986

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